スタッフによるリレーコラム
慶應義塾大学藤沢キャンパスにおける講座
「投資家とベンチャー企業家の建設的共生関係の構築」
| レジュメ | 詳細版 | 政策論 |
1. 今なぜベンチャーか?
投資とは何か?(S=I)
- 経済のフレームを頭に入れよう。変化には、投資が必要であり、投資によって変化に対応し、変化を主導する、という考え方重要。
- リスクとは、変動で、チャンスと裏表の関係。リスクマネージメントとはリスクを如何に生かすかということで、リスク回避とか、リスク隠蔽を意味しない。
- 日本は、預貯金が異常に多い。対応して企業は自己資本比率が低い。これは何を意味し、今後どうなるか?
新しい分野に投資するのにふさわしい担い手は誰か?
- 独立的活動が比較優位のある分野とは?相反するチームにそれぞれファンがいてプロスポーツは盛り上がる。
- 独立とはなにか?何から従属でないことか?
戦後の産業発展史を考える
- 戦後からの復興で民主化、しかし、冷戦構造で一気に全体主義化?70年代以降、役人臭のするサラリーマンが台頭、バブル爆発。
時代の大変革期「計画経済から市場経済へ」
- これまでの日本の各セクター同士の協力関係は、時代遅れに
2. 投資と融資はどう違うか?
ベニスの商人にみる混同と混乱(基本中の基本)
- ゼロサムでない投資の世界、その論理とは?(プロスポーツにみるマクロ的矛盾)
- バブルでない。英語で株をシェアという。何をシェアするのか?
株券を勝手に作成して良いか?
貸しは返さなくて良いか?
- 融資の世界はゼロサム。
- どちらの論理も「信頼性」は重要。ただし、論理は全く異なる。
3.ベンチャーキャピタルとは何か?
日本のベンチャーキャピタル史
- 法人資本主義の妥協の産物。
- ジャフコモデルが、成功パラダイムに。
「独立+責任」を提供
- NTVP設立のいきさつ。
- イスラエルの衝撃。
- 組合活動報告会の様子。個人と法人の違い。
個人と個人の信頼・共生関係
4.ベンチャー必勝の方程式=PVPの段取り
事業サイクル
十のステップ
1. 純粋な発展への強い思い(来る日も来る日も粘り強く考え思う=個人の強化)
2. 基本的な気になる「大問題」は、1年くらいかけて、出きるだけ早く解決する
3. 現状分析(特に人材能力、環境)を基にした、株式公開可能な「売れる」事業シナリオの選択
- 新しい株式公開の観点=投資家へ魅力のアピール=産業社会的インパクト有り?
- ビジネスモデルの構築(同じ事業でも、それにより必要資本・人材・組織に差)
- 「密やかな検討期間」が、大いなる飛躍のためには重要な事がある(情報オープン必ずしも最善ならず)
4. 株式増資による借入によらない事業資本の調達シナリオ検討
- 資本はその気になれば増資で数千万円から数億円調達可能(資本政策)、中途半端はだめ。
- 相談相手が重要(株主政策は非常にデリケートな問題)
5. 事業計画の策定、投資家(ベンチャーキャピタル)への提示・交渉・個の意思決定
- 徹底した開示が前提=監査法人の監査、市場分析、財務計画(5年で公開前提)
- 個の意思決定には、家族、特に配偶者の納得が重要 ・投資契約(合意書)の締結
6. ファイナンスの実行=外部株主との共同作業がスタート=取締役会の充実=計画遂行
7. 契約類の整備の必要性(特に技術系ベンチャーは重要)
8. 株式公開の準備、審査・PR活動(開示のための、組織管理体制の独特の整備)
9. 株式公開(一般投資家売買開始)→公開会社としての活動→更なる変転・発展
10. M&Aによる買収も売却もあり得る(個人が根本、「会社」はベンチャープロジェクト実現のフレームに過ぎない、という冷静な認識重要)
新しいベンチャープロジェクトの特徴
- 会社は単に法的フレームに過ぎないという割り切った考え方。(家ではない)
- 独立ベンチャーキャピタリストとの投資契約による、プログラムされたプロジェクト。
- 如何なる既存勢力からも、独立したプロジェクトである。
- 非常勤取締役が強烈な質問をする取締役会の充実が重要となる。
- 数億円の資金を使って、数年でグローバルなマーケットで特徴的ポジションをスピーディに確保し、数十億円の売上と、数億円の利益を実現するイメージ。
- 設立段階から未公開段階でもカラフルな投資家評価に重きを置き、特にアナリストの評価を意識。
- フェアな分配(インセンティブ)がプログラムされている。
- わかれば、誰でも取り組める。
- 貧困脱出型よりも、自己実現型に適合。
- 借入に依存せず、失敗しても再出発が容易な仕掛け。
- 株式公開だけでなく、M&Aによる売却もある。
- 法的契約を重視。
5.ジャパンケアサービスの事例
- 今でこそ介護、平成2年当時は?
- 未来に対する仮説を積み上げる
- 周囲を説得する(投資に関し、組織は馬鹿?)
- 過労で一ヶ月間入院する
6.若いうちに自己の深淵を充実させておく
全体主義的論理からの脱出
- 日本の経済社会観を各人の中で変革させるとき。サラリーマンパラダイム?
- 新家族主義の景色。
市場の健全な景色「多様性」
- 行政の役割は、何もない。
- テレビで観たベトナム北部の山岳民族が毎月集まる市場の多様さ。
シンプルな疑問を大事にする
大学本来の意味
- 人生の途中で、独立性を回復強化する場所?
- 心の深淵を豊かで独創的で集中したものに耕しておくことが重要。でなければベンチャーは、不安、空虚。
- 若者に期待す。
- 本門寺ボーイスカウトの子供起業体験合宿(ボランティア)を手伝って。
7. 補論
政策論
8.ケーススタディー 「投資の価値」
<その1>未だ存在しない業種を、投資家がどう評価するか?日本には、これまで正確な意味でベンチャープロジェクトと言えるようなプロジェクトが、この事例以前は、存在しなかった。私の知る範囲でのプロジェクトとして、ハイテクではないが、ジャパンケアサービス(店頭登録)の事例が示唆に富んでいる。
- ジャパンケアサービスは、在宅介護サービス事業を先駆的にやってきた企業で、平成9年10月店頭登録。業界最初の公開会社となる。
- 平成2年対馬社長と村口、相談開始。当時、介護事業と言う商売の範疇が世の中には無かった。最初は、こんなの事業になるのかな、と正直思う。
- 平成2-3年、事業モデルを社長と何回も相談。何回か会ううち、事業性に魅力を感じる。
- 平成4年、事業計画を策定、村口業界の将来性を徹底調査(詳細調査3ヶ月)。
- 当時の会社の実質売上25百万円、赤字35百万円、債務超過状態。第一回ファイナンス1億円(額面の4倍にて)実施。組織説得に難儀する。
- 平成6年第二回ファイナンス実施。
- 平成9年10月野村證券主幹事で、株式公開(店頭登録)。
特徴
- 業界がないに等しい状況から、株式公開を意識してビジネスプラン策定した。(当時、介護と言う表現自体、聞きなれない表現であって、組織調整に手間取った。)
- 実質赤字、債務超過状態から、1億円のファイナンスを実施し、事業の立ち上げに使ってもらえた。
- 当初、業界の様子が見えてきてから、証券会社の方で、引き受ける先も必ず出てくるだろう、との読みであった。案の定、平成6年ごろより、高齢化社会の到来が社会的問題と認識されるようになり、証券会社が積極的に引き受けたい、という状況になった。
<その2>スタートアップ企業に、ベンチャーキャピタルが投資し、短期公開を目指す 以下インフォテリア社からの、ニュースリリース 1999年3月17日 報道関係各位 インフォテリア株式会社 http://www.infoteria.com/
インフォテリア、第1回投資受け入れを確定 総額1億円の第3者割当増資でグローバルなXMLソフト開発を加速
ソフトウエア開発ベンチャー企業のインフォテリア株式会社(東京都大田区、代表取締役社長:平野洋一郎)は、1999年3月17日、同社の第1回投資受け入れを確定したことを発表しました。第1回投資受け入れは、総額1億円の規模で1999年3月と6月の2回に分けて実施されます。内訳は、3月分が3,400万円、6月分が6,600万円となります。3月分については、1株の発行価額が20万円(額面5万円)で、3月16日に払い込みおよび増資手続きを完了しました。
今回の投資は、日本テクノロジーベンチャーパートナーズ(NTVP) i-1号投資事業有限責任組合(東京都文京区、ベンチャーキャピタリスト:村口和孝氏)およびコンピュータ業界の個人投資家約10名の参加によって行われます。内容は、出資組合員を個人に限定しているNTVPがリードインベスターとして総額の58%を受け持ち、コンピュータ業界関係者で資金面だけでなく事業面でも支援を行う「エンジェル」と呼ばれる個人投資家が42%を受け持ちます。インフォテリア株式会社は、今回調達した資金で、次世代ウェブ技術の中核となるXML関連製品とサービスの開発およびマーケティング体制の大幅強化を図り、店頭公開およびその後の事業展開の基礎を確立する計画です。
また、今回の投資確定と同時に、NTVPベンチャーキャピタリストの村口和孝氏を取締役財務戦略顧問(非常勤)および、エンジェルとして筆頭投資家である、米国ロータスデベロップメントコーポレーション相談役の菊池三郎氏を取締役経営戦略顧問(非常勤)として迎え入れました。村口氏は、今後の店頭公開へ向けた財務戦略を中心に、菊池氏は、国内外のコンピュータ業界での幅広い人脈を活用して国内での販売戦略や海外戦略を中心にインフォテリア株式会社の経営に携わる予定です。
NTVPの村口氏は今回の投資に関して、「昨年11月に施行された『中小企業等投資事業有限責任組合法』適用の第1号であるNTVPでは、投資家と起業家が共同して企業というひとつのプロジェクトを実行する米国型『シリコンバレーモデル』でのベンチャー企業育成を目指しており同じモデルを指向するインフォテリア社への投資を決めた。インフォテリア社は、次世代インターネットのコア技術であるXMLをベースとし、国内だけでなく世界市場を対象とした製品開発を行っていること、優秀な技術者を抱え世界に通用する高い技術力をもっていることなどから、事業発展の可能性が高いと判断した。日本で初めてといえる『シリコンバレーモデル』の見本として、このプロジェクトを成功させたい。」と、述べています。
インフォテリア株式会社は、昨年9月に国内初のXML、(eXtensible Markup Language)専業ソフトウェア企業として設立されました。同社は、設立当初から米国のベンチャー企業をモデルとし「融資ではなく投資を中心とした資金調達」による事業展開を指向しており、今回の投資受け入れは、その趣旨に沿ったものとなります。同社は、最初の製品として本年1月27日より高性能XML処理エンジン「iPEX(アイペックス)」を出荷済みであり、同英語版も3月8日から出荷を開始しました。さらに、同社は「XML Solution Components」、「XML Server シリーズ」などのXMLベースの企業間情報システム構築用ソフトウェア製品の出荷を本年第2四半期より開始し、これらの新製品群を国内および世界市場に向けて提供していく計画です。(以上、インフォテリア社からのニュースリリース)。
日本テクノロジーベンチャーパートナーズ(NTVP)投資事業有限責任組合 ベンチャーキャピタリスト 村口和孝 ※禁無断転載。全ての著作権は著者に属します。 |