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青少年起業体験プログラム

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東京都大田区 「NTVP青少年少女起業体験キャンプ」(ボランティア)

「株式会社 バルーンカンパニー」班

<初顔合わせ>
穏やかな心地よい朝でした。この時期の寒暖の差を心配していたのですが、それとはうらはらに適度に締まった外気に包まれて、本門寺への道を辿ることができたからでしょうか。散歩するのに片道がちょうどよい距離のせいもあったかもしれません。随分気持ちよく初顔合わせに臨めました。

<ボーイを担当した個人的理由>
イメージ今回はボーイを担当させていただいたのですが、かれらとともにやりたいという希望には、少なからず家庭環境に影響があるのです。様様な要因が重なり合っています。しかしここでは次の二点に絞って続けましょう。一つは母が中学の教師をやっていること、もう一方は下の妹が中学生であること、です。

日常母が受け持つ子供たちの話題には事欠きません。さらに、美術の教師ということで子供たちの作品なんかも見る機会に恵まれたわけです。そこでいつも思うのは、とんでもない思いつきをしているということです。破天荒といったり技術は劣ったりしますが、絵画専攻の美大生の作品展なんかよりも面白いこともある(怒られますかね)。それに母が学級運営で相談してくることもありました。学校の先生は教育という一点ばかり考えてしまうようで、外部の意見が非常に目新しいものに見えるようですね。それもともすれば、日教組がステレオタイプ化してしまった必ず白黒はっきりさせるやり方との狭間になってると思うんです。

こんなことがありました。小学校6年のとき湾岸戦争が起こり、それに対する作文が課題とされました。自分はアメリカの発言を真に受けていたこともあって、始めたからには徹底的にやって禍根を断つべきだとしたんです。ところが先生は単純に戦争反対という答えを用意していて、評価は低いところに落ち着きました。そういう枠組みに社会構成員の多くが囚われているのが、今の教育の問題点ではないでしょうか。

少し話が逸れました。もう一方の方です。中学生に接する機会は彼女によって随分一般的な人より多いわけです。見ていると、知識をつけてきつつあってそれを誇ったり、飛躍的な発言をしたり、まだ甘えたがったり、飽きない。それに彼らには、大学生という存在を少々持て余している気がするのです。もう少し幼いと大人として括るのでしょうが、彼らぐらいになると意識の中で社会の構成層が多段階化してきて、大人ほどずっしりとした感じのない人として、だからこそ完全な大人によりも説得力を感じるのではないかと、今回のことや教育実習生に対していたころのことを含めて、思ったりします。人に一からものを教えることが不得手とすることからも、そう感じてきていたボーイの層とならうまくいくのではないかと、賭けてみることにしたのです。自分が中学生のころ書いたものを見てみると結構すごいと感じるものです。それは皆さんも試してみてはいかがでしょう。意外と高校のころの方が情けなかったりします。自分より下の世代には成長して発想が乏しくなるようなことには、なって貰いたくないですよ。

<事業計画策定>
イメージ担当チームのメンバーの顔は、そんな自分の思惑が図に当たったような気にさせてくれました。まだあどけなさは残しながら、バシバシ発言する。かと思えば簡単な漢字がわからなかったりする。でも実力は本物。今回のプログラムの第一歩である事業計画を、他のほとんどがろくに考えてもいないのに、既に用意していたのです。その上仕入先も概ね見当をつけてある!何よりも興味を引かれたのが、彼らが唯一食べ物をまったく扱わなかったこと。縁日のようなつもりだった子が多かったのか、そんな中彼らの事業計画書は熱い注目を集めるに至ります。事業目的で「こどもに夢を与える」と大見得をきったのにも、驚きとおかしみがこみ上げてきます。そんな彼らの事業はパフォーマンス・バルーンの販売。長い風船を捩って縒って、動物の形などに仕上げるものです。そのかわいらしさが、七五三で来るような子供たちには大人気となりそうな予感がする商品です。

<ベンチャーキャピタリストからの投資>
彼らは商品分析も堅実で、商品の出来具合が全てであるが初日夜の出店準備時間に練習すれば問題ないとベンチャー・キャピタリストにアピールします。原価面に関しても、一度電話で調べるようアドバイスしただけで調査と交渉の大切さを悟ったらしく、顔見知り中心ではありますが大人に積極的に声を掛けて、交渉も巧みに運びます。起業までで心残りといえば、資金調達に関して理解度に個人差が開いたこと、借り入れに対する偏見を取り除ききれなかったことです。後者に関しては今回の特別ルール(会社解散時でも、資本金は返却しなくてよい)との兼ね合いからも、借り入れに関しては考えてくれているのだからひとまず棚上げすることにしました。彼らなりの借り入れに対する分析とその結論は、事前の打ち合わせで、仕組みをより知ってもらうために借り入れは必ずしましょうと申し合わせていたスタッフを、うならせました。そんな有望な彼らに、ベンチャー・キャピタリストとしては額面500円の株券を2株で5000円出資することにしました。時価は額面の5倍に達したわけです。これで自己資本とあわせて10000円。原価は低いのですが、彼らとともに現地でマーケティング・リサーチした販売目標額と突合せ、お釣りなどの運転資金込みで算出したことを伝えると、財務計画を立てるのにはさすがに苦労した彼らのお眼鏡にも叶ったらしく、納得の面持ちです。

<仕入活動と、サービスの準備>
イメージところが実際に仕入れてみると彼らの交渉力は予想以上の効果を発揮し、予定仕入額5000円弱に対してなんと1000円強で全てを調達してきてしまいます。これにはさすがに驚き、キャピタリストとしては期待に胸が高鳴ります。ここまで順風満帆できた彼らの航海でしたが、雲行きが怪しくなり始めます。さっそく風船作りに挑み始めると、初めはなかなかうまくいかないだろうと考えていたスタッフの心配をよそに、いきなり作品を作ってみせたのです。これには失敗を恐れない強さと初めてのことにもうまく対応してしまう柔軟さに、ただただ驚くばかり。しかしそれは同時に“練習”に熱中しすぎる結果を生みました。数を心配する前に、風船に空気を入れるポンプが壊れてしまいました。これは口で空気を入れるのには大変なため、コストがかさむのを承知で仕入れリストに入れていたのですが、仕入れ時にはうまく調達して仕入額を減らす要素になったものです。みんなで作っていたわけで、われもわれもとポンプに殺到した結果でした。この後もう一台潰してしまい、結局高くついてしまいましたのでさすがにポンプに関しては子供たちも慎重になりました。ただ相変わらず練習熱心で止まるところを知りません。懸命に説得しましたが、結局追加仕入れをする破目に。その無邪気さはかわいいのですが、キャピタリストとしては頭の痛い限りです。

<役割分担>
イメージこの頃になると、子供たちの役割も随分鮮明になりました。班長を務め、今回も社長の椅子に座ったO君は、ときどき弱気な面も見せますがさすがにうまく引っ張ってくれて、我々は積極的に彼を立てることにしました。逆に常に強気で風船作りでも一番の腕を見せたKz君は、自由にやらせてくれる社長の下、オピニオン・リーダー的な持ち味を存分に発揮します。この二人を中心にD君・Kw君・チーム最年少のH君たちをうまく回転させています。先の二人以外はまだテレが強いのですが、それでもうまく回っている彼らを見ていると、おもいろいものでした。

<いざ、出店準備、問題発生>
翌朝も澄んだ青空におおわれてポカポカしたいい日和でした。常緑樹が映えさす空も見事でしたが、幾星霜を経て黒々とした甍が蒼碧に、すっくと立つのも気持ちのよいものでした。

そんな旭が後光となって射したのかもしれません、彼らの顔は自身に満ち溢れていました。ところがいざ準備を始めてみると、ちょっとした問題が発生しました。暖かい外気のなかで形をつくっている間に中の空気が膨張してくるのか、途中で次々と割れてしまうのです。午前9時から始めたために客足の出は鈍く、子供たちは思い通りに行かない風船に業を煮やしながらも、再び風船作りに熱中しはじめました。その頃になると七五三の参拝に訪れた親子連れが増えてくるのですが、営業に出ようとしません。キャピタリストはすっかり営業マンです。焚きつけても出て行かないし、出て行っても売らずに帰ってきてしまう。逆に他の店は営業力で売上を伸ばしていきます。昼頃になっても売上が伸びず、損益分岐点上を彷徨していました。彼らもやる気をなくして社長さえ帰りたいと言い出す始末。そうなってしまうと下手に口を出しても駄目で、どうしたものかと取り敢えずご飯を食べさせました。

<彼らを救った商品力>
イメージそんな彼らを救ったのは、その商品力でした。後からやってくる子供たちが行き違いに帰っていく子供の手に握られた風船を見ていて、総門をくぐったところにあるお店を見ると駆けつけてくれるのです。こうして午前の半分ほどの時間でしかない午後に、3回のラッシュを迎えて午前と同じくらいの売上をみせました。こうなると彼らほど頼りになる社員もいないでしょう。再び生き生きとして、ときに大人の露骨さに悩みながらも、熱中していました。彼らの人生のなかで、これほどシビアな要求を突きつけられ、それでいてこれほど多くの人に喜ばれた経験は初めてに近いのではないでしょうか。午前中よりのんびりと見ていられた午後は、そうして過ぎていきました。

<決算と表彰>
決算の段になるとKz君は眠りこけてしまいましたが、ほかの子は好成績が出せそうな結果にソワソワ。お金の計算に臨む姿勢は真摯なもの。他社との比較から、利益率No.1であることを告げると、社長は得意げ、ほかの子はちょっと分からないような顔。その社長も表彰が利益率でなく風船作りの技術を称えたものと分かると、少し落胆気味の表情に。分かりやすい数字で評価してもらえなっかたことで、彼は複雑な気持ちのようでしたが、それだけが評価の対象ではないということには気づいたのではないでしょうか。

<キャンプで学んだ可能性>
イメージ彼らとの事業は、半面期待通り、半面それ以上のものを見せてくれました。起業するという行為よりも、教育での可能性を強く感じずにはいられませんでした。理論的には教育は家庭単位でのみ完結することが難しいのは分かっていました。しかし実体験の力は大きなものですね。この1泊2日のウィットが自信を持たせてくれそうです。最後になってしまいましたが、このキャンプに携わった全ての方にお礼を申し上げます。そして皆さんがご多幸であることを祈念して。

平成11年11月16日 田中秀明
各班のレポート
「株式会社 おふくろの味」班
「株式会社 バルーンカンパニー」班
「株式会社 ぼたもち」班
「株式会社 ミルキーウェイ」班
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